TOMOO「大人になったら」が心に残る理由。聴くと、忘れていた記憶に会いに行きたくなる
最近、TOMOOの「大人になったら」を聴いている。
きっかけは、映画「映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」の主題歌になったことだった。
クレヨンしんちゃんの主題歌と聞くと、子ども向けの明るく楽しい曲を想像するかもしれない。
でも、この曲を実際に聴いてみると、少し違う。
明るい。軽やか。聴いていて気持ちいい。
なのに、なぜか少し寂しい。
そして、その寂しさがあるからこそ、聴き終わったあとに不思議な安心感が残る。
TOMOOを知らなかった人にも、クレヨンしんちゃんを普段見ない人にも、一度聴いてほしいと思ったのは、この曲が「子どものための曲」ではなく、むしろ大人になった今だからこそ刺さる曲だと感じたからだ。
「記憶の奥の奥の奥」から始まった曲
この曲について知って、特に印象に残ったのがTOMOO本人の制作エピソードだった。
TOMOOはインタビューの中で、「記憶の奥の奥の奥」というメロディが最初に浮かび、それを大事にしたと話している。
「記憶の奥」ではなく、
「記憶の奥の奥の奥」。
この言葉を聴いただけで、この曲の世界が少し分かる気がする。
誰にでも、普段は思い出さない記憶がある。
小さい頃に見た景色。
友達とくだらないことで笑ったこと。
家に帰ると誰かがいてくれたこと。
昔は当たり前すぎて、何とも思っていなかった時間。
大人になって忙しくなると、そういう記憶は少しずつ奥へ奥へとしまわれていく。
「大人になったら」という曲は、そんな記憶を無理やり引っ張り出すのではなく、そっと覗きにいくような感覚がある。
だから聴いていると、曲の中の誰かの記憶ではなく、自分自身の記憶を思い出してしまう。
魅力① 大人になることを、寂しいだけで終わらせない
「大人になったら」というタイトルだけを見ると、少し寂しい曲に思える。
子どもの頃に思い描いていた未来と、実際に大人になってからの生活は、きっと違う。
あの頃は何でもできると思っていた。
毎日がもっと特別になると思っていた。
でも実際は、仕事をして、疲れて、明日のことを考えて、気づけば一日が終わっている。
そんな現実を知ってしまったからこそ、「大人になる」という言葉には少し寂しさがある。
でも、この曲はそこで終わらない。
大人になったからといって、子どもの頃の自分が消えてしまうわけではない。
むしろ、大人になったからこそ分かることがある。
「あの時間って、実はすごく大切だったんだな」
「あの人がいてくれたことって、当たり前じゃなかったんだな」
そうやって過去を振り返ることで、今まで気づかなかったものの価値が見えてくる。
だからこの曲は、子どもの頃を懐かしむだけの曲ではない。
大人になった今だからこそ、過去の自分から受け取れるものがある。
魅力② 明るいのに、少し泣きたくなる
この曲を聴いていて面白いのは、決して暗い曲ではないことだ。
むしろ軽やかで、前向きで、自然と体が動くような心地よさがある。
それなのに、どこか胸がきゅっとする。
これは、ただ「元気を出そう」と言っている曲ではないからだと思う。
TOMOOの音楽には、明るさだけではなく、その裏側にある寂しさや切なさを一度ちゃんと通るような感覚がある。
だから、無理やり笑わせようとはしない。
「大丈夫、大丈夫」と励ますのでもない。
ただ、寂しい気持ちも含めて、そのまま抱えていていいような安心感がある。
悲しみを消して明るくするのではなく、悲しみを抱えたまま少しだけ前を向ける。
そこが、この曲の優しさなのだと思う。
魅力③ クレヨンしんちゃんだからこそ、より響く
そして、この曲と「クレヨンしんちゃん」の組み合わせがとてもいい。
クレヨンしんちゃんは、多くの人にとって子どもの頃から知っている作品だ。
小さい頃に見ていた人が、大人になってから映画館で観る。
昔はただ面白かった作品の中に、今になって見ると家族や友情、思い出についての物語が見えてくる。
それって、まさに「大人になったら」という曲が歌っていることと重なる。
子どもの頃には気づかなかったものが、大人になった今なら分かる。
昔は何でもなかった景色が、今見ると懐かしい。
昔は当たり前だった人との時間が、今思えばかけがえのないものだった。
そんな「時間を重ねたからこそ見えてくるもの」を、TOMOOの歌声がそっと拾い上げてくれる。
だから、この曲は子どもが聴いても楽しいし、大人が聴くと少し違う意味で刺さる。
魅力④ TOMOOを知らない人への入り口としても最高の一曲
TOMOOをまだ聴いたことがない人に、この曲から入ってみてほしいと思う理由もここにある。
TOMOOの魅力は、単純に「歌が上手い」とか「メロディがいい」というだけではない。
言葉の選び方が独特で、日常の中にある小さな感情をすくい上げるのがうまい。
そして、明るさと切なさが同時に存在している。
「大人になったら」は、その魅力がとても分かりやすく詰まった曲だと思う。
クレヨンしんちゃんの主題歌としてTOMOOを知った人が、そこから他の曲を聴いてみる。
そうしていくうちに、「この人の曲、なんか自分のことを分かってくれている気がする」と感じる人もきっといると思う。
大人になった今だから、聴いてほしい
子どもの頃は、未来のことを考えるだけでワクワクした。
大人になった今は、未来のことを考えると不安になることもある。
仕事や人間関係、将来のこと。
昔のように、何も考えずに笑える時間も少なくなった。
でも、なくなったわけではない。
心の奥のどこかに、ちゃんと残っている。
「記憶の奥の奥の奥」に。
「大人になったら」は、その場所をそっとノックしてくれるような曲だ。
最近、少し疲れている人。
昔のことをふと思い出すことが増えた人。
子どもの頃に好きだったものを、最近また好きになった人。
そして、まだTOMOOを聴いたことがない人。
そんな人に、一度この曲を聴いてみてほしい。
きっと聴き終わったあと、曲の感想より先に、自分の中にある「忘れていた何か」を思い出すと思う。
大人になったからこそ、もう一度会える記憶がある。
そんなことを教えてくれる一曲です。
※TOMOOの制作背景・インタビュー内容をもとに、楽曲から感じた魅力を個人的な視点でまとめています。

コメント