「焦らなくていい」と言われているみたい。TOMOO「ベーコンエピ」がそっと残していくもの
YouTubeでTOMOOのライブ映像を見ていて、「ベーコンエピ」という曲に出会いました。最初に感じたのは、とにかく美しい音楽だな、ということ。派手に感情を揺さぶるわけではないのに、聴いているうちに心の力が少し抜けていく。特に好きなのが、「焦らずゆっくりでいいよ」という気持ちを、少し硬いエピパンに重ねてしまうところ。その発想があまりにもTOMOOらしくて、気づけば何度も聴きたくなっていました。
アーティスト:TOMOO
曲名:ベーコンエピ
今回紹介する映像:「ベーコンエピ」Live from “Walk on the Keys”, 2023
パンの話をしているのに、いつの間にか「生き方」の話になっている
「ベーコンエピ」というタイトルだけを見ると、少し不思議な曲です。もっと大きなテーマを扱っていそうな言葉ではなく、パン屋さんで見かける身近な食べ物。その身近さが、この曲の魅力をつくっているように感じます。
特に印象的なのが、「焦らずゆっくりでいいよ」という感覚を、ちょっと硬いエピパンに結びつけるところです。普通なら励ます言葉として終わってしまいそうなのに、そこへ食べ物の具体的な手触りが入ることで、一気にその言葉が身近になる。きれいごとを言われている感じがしないんです。
「早くしなきゃ」「もっと頑張らなきゃ」と思っているときほど、こういう少し変わった例えが効くのかもしれません。人生を大きく語るのではなく、パンをかじるような日常の中に、ゆっくり進んでもいいという感覚を置いてくれる。その距離感が心地いい曲です。
「似ているから」でも「違うから」でも、人を好きになる
似てるから巡り会えたのか違うから惚れちゃうのかな
この一節も、とても好きです。人と人が惹かれ合う理由について考えているのに、答えをひとつに決めていません。「似ているからなのか、それとも違うからなのか」と、そのまま迷っている。その曖昧さが、むしろリアルに感じられます。
誰かと仲良くなったとき、「自分と似ているから話しやすい」と思うこともあれば、「自分にはないものを持っているから惹かれる」と感じることもあります。どちらが正しいのかなんて、きっと決められません。
この曲は、そういう人間関係の不思議さを、難しい言葉で説明しようとしないところがいい。少し考えて、少し笑って、また聴きたくなる。そんな余白があります。
「大人になる」のも「子どもになる」のも、一緒がいい
大人になるのも子どもになるのも君とがいいよ
この言葉には、恋愛の甘さだけではないものを感じました。大人になるということは、責任が増えたり、以前のように無邪気ではいられなくなったりすることでもあります。でも、誰かと一緒なら、その変化さえ楽しめるのかもしれない。
そして面白いのが、「大人になる」だけではなく「子どもになる」と並べているところです。しっかりしなければいけない日もあれば、何も考えず笑っていたい日もある。その両方を含めて、「君とがいい」と言っているように感じます。
恋愛の曲なのに、恋人だけに限らず、大切な人との関係にも重ねられる。そんな広がりがあるからこそ、聴く人によって思い浮かぶ相手が変わるのではないでしょうか。
こんな人に聴いてほしい
- 最近、少し頑張りすぎている人
- 「もっと早く進まなきゃ」と焦っている人
- 大切な人との何気ない時間を思い出したい人
- 恋愛を、甘いだけではない言葉で描いた曲が好きな人
- まだ知らない音楽に出会いたい人
美しい音楽は、心を大きく動かすだけじゃない
TOMOOの「ベーコンエピ」は、聴いた瞬間に強烈な印象を残すというより、聴き終わったあとにじわっと残る曲でした。少し硬いパンの話から、人を好きになることや、一緒に歳を重ねていくことまで広がっていく。その自然な言葉選びが、とても美しいです。
もし「ベーコンエピ」というタイトルが少し気になったなら、まずはライブ映像から聴いてみてほしいです。きっと、聴き終わったあとに「なんか、いいな」と思える瞬間があるはずです。

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